2012年9月27日,コーエーテクモゲームスより3D対戦格闘ゲーム「DEAD OR ALIVE 5」( / )が発売される。コンシューマ機向け対戦格闘ゲームとしてリリースされてきた「DEAD OR ALIVE」シリーズは,高いキャラクター性とド派手な演出を兼ね備え,カジュアル層からも人気の高いタイトルだ。
また本作は,2012年6月6日に配信が開始された「Virtua Fighter 5 Final Showdown」( / )を始めとする「バーチャファイター」シリーズから,ゲストキャラクターとしてアキラとサラが登場することでも話題になっている。
今回は,「DEAD OR ALIVE 5」の早矢仕洋介プロデューサーと新堀洋平ディレクター,そして「バーチャファイター」シリーズの片桐大智氏と羽田隆之氏にインタビューを行った。
DEAD OR ALIVE 5についてだけでなく,バーチャファイターとのコラボレーションに至った経緯,家庭用「Virtua Fighter 5 Final Showdown」の反響や今後の展望などなど,タイトルの垣根を越えて行われた今回のインタビューを,それぞれの作品のファン,そしてすべての格闘ゲームファンにお届けしよう。
(左から)SEGAの片桐大智氏,羽田隆之氏,コーエーテクモゲームスの早矢仕洋介氏,新堀洋平氏
DEAD OR ALIVE 5が掲げる「格闘エンターテイメント」とは
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本日はよろしくお願いします。「DEAD OR ALIVE 5」(以下,DOA5)は「格闘エンターテイメント」というコンセプトを掲げていますよね。これまでの情報でも漠然とその意図は見えるのですが,より具体的にこの言葉に込められた意図を教えてください。
早矢仕洋介氏(以下,早矢仕氏):
DOA4を作ったあと,その次の格闘ゲームの形?要素が正直見つからなくて,新しいDEAD OR ALIVEを作るのが難しかった期間がありました。DOA5は,ナンバリングタイトルとして7年振りになりますが,時間が経っていくなかで,コアなファイティングゲームであり,かつエンターテイメント性を合致させたものが,今の時代の格闘ゲームとしてアリなんじゃないかと考えたんです。
例えば崖から落ちるだけじゃなくて,ステージ自体がボッコボコにぶっ壊れながら落ちていく,しかもそれらすべてが格闘ゲームが持つ駆け引きの中に落とし込まれているようなものはどうだろうかと。
新堀洋平氏(以下,新堀氏):
そういったコンセプトのの核となる部分を決めたのが,2年ぐらい前ですね。
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なるほど。DOA5で追加された「クリティカルバースト」「パワーブロー」「ダイナミックアトラクション」といった新システムは,そのコンセプトに従ったシステムというわけですね。
新堀氏:
そうです。なかでもダイナミックアトラクションは,ヘリを落としたり,巨大ピエロの口に入って飛んでいったりと,ぱっと見で分かるエンターテイメントになっています。
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巨大ピエロは,先ほどインタビュー前にプレイさせてもらったときに発生して,爆笑しました(笑)。
新堀氏:
ただ派手なだけでは「ステージのギミックが邪魔になる」というように,格闘ゲームファンからは,底が浅く感じられてしまう可能性がありますよね。そこでダイナミックアトラクションには,簡単に発動しない代わりにダメージが大きく設定されているんです。
慣れた格闘ゲーマーであれば「ダイナミックアトラクションが狙える状況だったら,パワーブローにつながるコンボを決めることで,より大きなダメージを与えられる」という具合に,ギミックを駆け引きの中に落とし込んだわけです。
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なるほど。より高いダメージを目指そうとすると,自然とエンターテイメント性の高い演出になるんですね。ということは,上級者ほど戦闘シーンが派手になりそうですね。
早矢仕氏:
そこが狙いです。そもそもパワーブローを入れようとしたきっかけも,2D対戦格闘ゲームのような演出の派手な必殺技が,3D格闘ゲームにあってもいいだろうというところからですし。
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確かにパワーブローが決まったときの演出は,いかにも必殺技という感じです。
早矢仕氏:
最後はパンチ1発でも勝てるけど,やっぱり必殺技で締めたいといった気持ちってありますよね。初心者同士が狙いたくなる見栄えの良い演出と,上級者の駆け引きの深み,その両立を目指しました。
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3D格闘ゲームって遊んでいる人はすごく楽しいですが,見ている側はどこがすごいのか,画面からは分かりづらいところがありますよね。
早矢仕氏:
ええ。昨今では対戦動画を見る文化が根付いてきていますし,見る側の人にとっても,対戦しているプレイヤーのテクニックや強さを分かりやすくしたかったんです。
新堀氏:
クリティカルバーストもまさにそのためのシステムで,これは初心者では簡単に決められないぐらいのところに落とし込んでいますが,DEAD OR ALIVEが得意な人であれば,駆け引きをかいくぐって,ちゃんと当てられるようになっています。
これを決めれば相手は無防備な状態になるので,そこから溜めが必要なパワーブローを発動して,さらにダイナミックアトラクションを狙うとか,自分の得意とする空中コンボに持ち込むといった,ご褒美タイムになるわけです。
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つまり,実際の対戦ではクリティカルバーストを巡る駆け引きが中心になると。
新堀氏:
細かい話になりますが,クリティカルバーストの始動技は,発生速度はそれほど早くはなく,慣れてくれば始動を見てからホールド(相手の攻撃を掴んでの返し技)ができるかもしれないくらいです。そのため,上級者同士の対戦でも当てるのは簡単ではありません。そこをプレイヤーがどう工夫して当てにいくのか,観戦時に自然と分かるようなゲームを目指しています。
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格闘ゲームの知識がない人でも,見ているだけでその様子が分かるといった感じですか。
新堀氏:
例えばサッカーを見ていて,ルールが分からない人でも,トッププレイヤーがオーバーヘッドキックでゴールを決めたら歓声を上げるじゃないですか。先ほど話したパワーブローはそのオーバーヘッドキックなんですよ。
そのゴールまで,どうやってつないだのか。サッカーだとパスだったり,位置取りだったりといった経過があります。その部分を,クリティカルバーストといったシステムが担っていて,技を上手く使って,パワーブローにつなげることで,トッププレイヤーであることがアピールできる。そんな設計概念になっています。
早矢仕氏:
あと,動画開発内では「バトルコンテ」と呼んでいるんですが,これを公開するとき,いままでは特殊なカメラをあてて演出していました。しかし今作DOA5では,体力バーを表示すればゲームプレイそのままになるという映像で出しています。ゲーム中とは違う特別な演出は入れていません。
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実際の対戦時の演出そのものが,十分にエンターテイメントになっているからこそというわけですね。
新堀氏:
はい。ちょっと演出が派手すぎるので,動画からちゃんと作っているところが伝わるのか,という不安はあったんですが(笑)。でも,先日のE3 2012でプレイしてもらったときに「ああ,ちゃんと大会でも通用する駆け引きにできたな」と確信が持てました。
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そういえば,「NINJA GAIDEN 3」( / )の初回特典として付いてきた体験版では「上段」「中段」「下段」の三択だったホールドシステムが,E3 2012出展版では「上段」「中段パンチ」「中段キック」「下段」の四択に変更されています。その意図はどんなところにあったのでしょうか。
新堀氏:
ぶっちゃけてしまうと,もともと私自身は四択が良かったんです。というのも,DOAは中段パンチと中段キックに良い技が揃っているので,それらを中心に戦いを組み立てたくなります。ということは,三択だと守る側は中段ホールドを多用するだけで,相手の戦術を大きく絞ることができてしまいます。
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四択だと,守る側が簡単には絞れませんから,戦術を生かせるようになるわけですね。
新堀氏:
ただ,NINJA GAIDEN 3を購入したアクションゲーマーが遊ぶという観点から見ると,いきなり四択はちょっと難しいのではないか,という不安の声が上がったので,まずは三択でホールドシステムに慣れてもらおうとしたんです。
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実際に,体験版を遊んだプレイヤーからのフィードバックはどうでした?
新堀氏:
格闘ゲーマーの方々からの感想は,やはり四択が良いというものが大半でした。これは予想どおりでしたが,リネージュ2 RMT,アクションゲームのファンとしてNINJA GAIDEN 3を買ったプレイヤーからも四択が良いという意見が多かったんです。それも,国内外を問わず。
早矢仕氏:
やはり格闘ゲームの楽しみ方は,パッと触って感じられるところだけじゃなく,修行じゃないですけど,トレーニングして強くなっていく過程にあると思います。
三択だと,最初のうちは楽しいんですけど,そこから強くなっていくための過程が凄く狭くなってしまう。だから,製品として出すときには過程をちゃんと楽しんでもらえるゲームにしようということで,私と新堀の間ですんなりと,四択でいくことに決まりました。
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駆け引きといえば,今作では崖から落下するときに,キャラクターが崖に掴まるという行動が選択できるようになっていますよね。あの状況ではどういった駆け引きが発生するのでしょうか。
新堀氏:
崖捕まりが発生したあと,落とした側は「打撃」か「投げ」の単純な二択の攻撃ができ,捕まっている側はどっちの攻撃に備えるのかを同様に二択で選ぶ,というものになっています。
でも実は攻撃側のモーションや声である程度判断できるようになっていて,素速く反応できればちゃんと防げます。そこで攻め側はなるべく遅く技を出したほうがいいんだけど,あまりに遅いと間に合わずに相手の上を跳び越えちゃって何も起こらないという,タイミングを含めたせめぎ合いが生まれます。
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なるほど。攻め側も守り側も,ギリギリまでそれを見極める必要があるんですね。
新堀氏:
さらにこのシチュエーションでは,打撃はガードされてもリスクがない代わりに,与えるダメージが小さく,投げは決まれば大ダメージを与えられる代わりに,ガードされると逆に体勢を崩されて自分から落下してダメージを受けるといったように,技の選択にジレンマがあるんです。その分,投げが決まるとド派手な技が発生するようになっていますが。
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そうなると,投げにいくのは難しくなりそうですね。軽いダメージを受けても良いので,投げだけは避けたくなります。でも,打撃のダメージを受けるだけでも致命傷になりそうな場面なら……。逆に,受ける側として,崖に捕まらないという選択肢はないんですか?
新堀氏:
これから最終調整を行うのですが,もしかしたら「投げを喰らうぐらいだったら,崖に捕まらずに落下したほうが受けるダメージが小さくて済む」ということになるかもしれません。
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ステージ移動は前作からありましたけれど,そこにさらなる派手さと駆け引きをプラスしたわけですね。なるほど,こうした要素すべてが「格闘エンターテイメント」につながっているわけですか。
早矢仕氏:
そうです。今作にまつわるすべての要素,お話してきた駆け引きやステージ,さらにはバーチャファイター(以下,VF)シリーズからゲストをお呼びすることも含めて,開発スタッフみんなが同じ方向を向いて制作できるように,「格闘エンターテイメント」という言葉を選んで使っているわけです。
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分かりました。もう1点,今作のオンライン要素について教えてください。前作DOA4ではテキストチャットが可能な観戦機能付きロビーを搭載するなど,オンライン周りはとくに革新的だったと思うのですが,今作ではどういった形になるのでしょうか。
新堀氏:
前作で可能だった,カバル RMT,テキストチャット可能なロビーに最大16人で集まって,勝ち残り戦やトーナメントで対戦するといった機能は当然今作にも搭載されています。加えて今作では,ロビーに用意された小さなテレビでしか観戦ができなかったり,対戦すると必ずプレイヤーポイントが上下してしまうといった問題点を改善しています。例えばフルスクリーンでの観戦だったり,ポイントの動かないロビーを用意したので,今まで以上に遊びやすくなっていると思います。
早矢仕氏:
新機能に関して言うと,ほかの格闘ゲームがチャレンジしている方向とはまた別のものを考えていて,それを早く言いたいんですけど(広報を見て)……ちょっとまだ言えないんですよね(笑)。
(一同笑)
新堀氏:
前作DOA4のオンライン機能はポップな感じで,みんなでワイワイと遊びやすいという雰囲気作りが狙いでした。それと比較すると,今作はベクトル自体が少し異なっていて,よりゲームゲームしているというか,初心者でも入りやすく,本当に格闘ゲーム好きな人がずっと遊べるような作りになっています。
早矢仕氏:
「今作をネットワークファイティングゲームとして遊ぶプレイヤーは,一体何を求めているのか」というところに対して,いくつかの試作的な答えを用意できたはずです。それらが皆さんにどう受け入れてもらえるか,すごく楽しみです。
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